絵と刀と旅の記録

美術館巡り好きでにわかオタの記録。

鏨の華(佐野美術館)

根津美術館での展示から気になってはいたものの仕事の関係で東京・大阪ともに行けずじまいで、やっと行ってきた。

刀装自体は東博はじめ色々な美術展にポツポツ見ていたけど、刀装メインの企画展は刀剣博物館での石黒派の世界以来。当時は刀剣に比べて知識がなくても楽しめる刀装の鑑賞はとても楽しかったなーと思い出しながら三島へ。


実際、足を運んでみての第一印象は「なんか少ないな?」。講演を聞いて知ったのだけど、展示数は大阪が一番多く佐野は特に優品に絞って展示をしたとのこと。というのも、大阪ではどうも客足がいまいち伸びなかったそうで、なんか世間から難しいと思われているようだみたいなことを言っていたような気がする。で、佐野の方はより分かりやすさを重視した展示にしたみたい。


展示は、武具というより根付とかを見る感覚に近かったかな。地透で彫られた狸茶釜鍔のひょうきんな可愛らしさや、木を見て森を見ずを表した象の絵を片切彫(多分)で表した鮮やかな鍔の一見華やかながら気づくとハッとする題材の面白さとか、あーこれ好きってのは結構あったんだけど武具っぽくはない。明治期の拵えとか明らかに技術の誇示と鑑賞を主にしたであろう華やかさで、自在工芸とかの方が親和性高い感じだったし。

あとはいいなーと思うものに片切彫のすっきりしたのが多かったんだけど、江戸絵画の洒脱で無駄のないあの感覚に近いかも。そんなわけで、美術工芸や江戸絵画を見るつもりで行くと結構楽しいけど武具としての刀装具を見に行くつもりだとしっくりこないかも…


そういう面では後藤家の刀装は武具っぽさもしっかりあるんでやっぱり見応えあったなー、一乗作の雪中松柏に銀象嵌の雪が降る静謐な雰囲気がとても好き。と、書き出してみたら結構見てるし楽しんだな自分笑

それから竹内栖鳳との繋がりについては嬉しい誤算だった!まさか絵が見られるとは…しかも個人的にはあまり見たことのない人物画だったので得した気分。栖鳳が下絵を描いた、墨絵のような鴉の鍔も余白をとった無駄のない静寂さがいかにも自分の好きな感じだし、刀身彫刻の下絵を描いた刀の拵えの雀の可愛らしさもとてもよかった。


刀剣関係の展示に行くとどうしても刀メインになってしまうので、刀装をゆっくり見られる機会になって楽しめた。時間と元気があれば刀装もゆっくり見たいんだけどねえ…